【土木】泉北水道企業団の解散議案について@R2.9月議会
9月議会において、非常に判断が難しい議案が、この「泉北水道企業団の解散」についてでした。
以前のブログでも書きましたが、泉北水道企業団というのは、光明池から送られている水を浄水にして、高石市の配水場に供給している組織です。
http://hatanakamasaaki.net/news/?p=3062
- 企業団そもそもが、大阪広域水道企業団の用水が整備されるまでの暫定的な浄水場であったこと
- 解散までに延長されてきたが、老朽化が臨界点に達し、安定的な水の供給ができていないこと
- 耐震化されていないことから、災害に対して脆弱であること
などの理由で、泉北水道企業団を解散し、大阪広域水道企業団から水を仕入れる方向で検討が進められてきました。
このように泉北水道企業団が存続するうえで困難となる客観的な事実があるわけですが、それでも「なんとか遺していく術はないものか」と、調査を重ねてきました。
そういった私が辿ってきた調査の道程に添いながら、論点を整理していきたいと思います。
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論点①:社会情勢について
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前回の選挙で、私がいちばん声高に叫んだのは「人口減少時代への対応」でした。
これからの自治体運営は、この人口減少という危機をどう乗り越えるかが、避けては通れない巨大な問題だと私は考えています。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO3495880004092018000000/
水道のみならず、下水道、道路、橋梁、公共施設、ガスなどの社会インフラは、一気に寿命を迎えるため、減少し続ける人口で維持費用を負担しなければなりません。
http://www.keidanren.or.jp/21ppi/pdf/thesis/150811_1.pdf
※20ページ参照
この水道の問題も、人口減少時代にどう対応していくのかが問われているからこそ、今回のような広域化が選択肢として出てきたわけです。
私は「享受できている当たり前のインフラを、どのような形に変えながら守れるのか」というポイントで判断するようにしています。
今回の件で守らなければならないのは、市民生活と安全保障だと考えました。
つまり、抑えるべき論点①は、人口減少時代において高くなり続ける水道料金をいかに抑制しながら、災害時などの水需要にいかに対応するか、です。
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論点②:災害時の水需要について
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私がこだわるポイントですが、主観はなるべく取り除いて、冷静に客観的な情報を挙げたいと思います。
地震などの断水時に泉北水道企業団が必要となるのは、以下の4つの段階を経た時です。
1つ目は、災害が発生し、耐震化率がほぼ0%の泉北水道企業団の管路が破断しなかったこと。
かつ、2つ目は、耐震化がほぼできている広域水道企業団の管路が破断したこと。
※パーセントの表現は「完全に正確」ではないという指摘を受けたので、修正しました。
かつ、3つ目は、光明池から信太山浄水場までの原水経路が土砂崩れなどで埋もれていないこと(7月のゲリラ豪雨による土砂崩れで経路が埋もれていました)。
かつ、4つ目は、広域水道企業団からの断水があって、7日間の備蓄水が枯渇してしまい、日水協などの給水応援も来なかった事態。
冷静に考えてみると、断水時に泉北環境の水が必要となるのは確率が低いわけです。
しかし、可能性が低いとはいえ、浄水場が近くにあるのは大きな安心材料です。
そして、それがなくなるのは、大きな不安材料になってしまいます。
そこで、6月議会時に「淀川水系のみに依存しない災害時の水供給の確保に向けて」と要望をしました。
そこで今回、和泉市の和田浄水場(光明池水系)の水供給が(災害時に)可能になるという内諾を得たと答弁があり、完全に水が枯渇する可能性が低くなりました。
とはいえ、不安材料が完全に払拭されたわけではありませんので、今後の考え方として論点⑥で申し述べます。
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論点③:市民負担について
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論点①の水道料金を掘り下げた内容を述べてみます。
泉北水道企業団を存続させるには、施設の耐震化を含む老朽化対策が必要になります。
そこで、示されたパターンのうち、私が現実的だと思った3パターンを挙げます。
いちばん下の「緩速ろ過、一部補強」なら存続の可能性が高まると考え、事業の許認可権者である大阪府に確認に行きました。
すると、大阪府の見解では、
(A)→「この条件なら存続」
(B)→「安定性があるかどうかが伺わないと判断できない、一般論で言うと難しい」
(C)→「耐用年数が過ぎている状況の中で、一部補強というものでいけるのか?という検証がそもそも必要」
※府の見解においては、私のメモなので一字一句が整合しているわけではありません
この時点で、緩速ろ過での存続は難しいという見解に当たってしまいました。
さらにこの時点で、緩速ろ過方式での存続路線は、安定的に浄水するために前処理施設の新設が必要であること、浄水場までの水路を補強する必要性が高いこと(今年の7月豪雨により土砂崩れで埋まってしまうという事故が発生)が惹起されていました。
高度処理、全面更新というパターンでは、世帯あたりの年間水道料金が平均で4000円も増額するということです。
以前に水道料金を増額したのが平均1000円で、そのさいも賛否が分かれました。
4000円というのは現実的でない料金アップです。
また、可能性は低いもののリスクとして考えておかなければならないのは、和泉市と泉大津市が解散を決めて、高石市が存続を決めた場合の料金設定です。
その場合は、4000円が14000円に膨れ上がります。
これは、信太山浄水場で供給している水を高石市が全て購入しなければいけなくなり、かつ、総務コストも単独で負担する可能性が高くなるためです。
可能性は高くないのですが、考えておくべきポイントは、3市が足並みを揃えることができないと、市民負担が一気に膨れ上がる可能性があるということです。
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論点④:解散にかかる費用について
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存続した場合だけが必要経費が発生するわけではありません。
解散した場合も、必要経費が発生します。
費用としては、以下のようになります。
(泉北水道企業団)
「現金預金」3億4600万円−「退職金引当金」1億3000万円=(A)2億1600万円
「解体撤去」4億6490万円−(A)2億1600万円=(B)2億4890万円
(三市の負担割合)
(B)2億4890万円×(高石市の負担割合)30%=7467万円
よって、高石市としての負担は、約7500万円でした。
以上の内容が解散に必要な経費と試算されました。
また、除却はどこまでの範囲(池は残すのか、など)かは、今後、近畿財務局と協議しながら進めていくとのことです。
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論点⑤:老朽度合いについて
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今回、水道事業をめぐって、大阪府のみならず、国土交通省や厚生労働省の根本的な考え方のレクチャーを受けてきました(※コロナ禍以前)。
どの官公庁も「安全な水を安定的に供給する」ことが前提とのことでしたが、この安定という表現がイマイチ理解しにくいものでした。
しかし、今回の9月議会において、大阪府OBの副市長から「水源、取水系統、浄水施設、送配水系統で構成され、一定以上の信頼性を有していること。泉北水道企業団の水道供給システムは全体としてその信頼性を確保している状況にない。水源の多重化を考える上でも、この信頼性の確保が前提(一部抜粋)」とありました。
泉北水道企業団は、水源と取水系統はなく(光明池土地改良区の管轄)、浄水施設と送配水系統を管轄しています。
また、平成30年度は147日間、令和元年度は99日間、令和2年度が41日間も送水できていないという不安定な状況があります。
こういった点から、「安定」という条件を満たしていないと受け止めざるを得ませんでした。
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論点⑥:今後について
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災害時の安全保障について、論点②で申し上げましたが、それでも災害時の水供給は万全とはいえません。
存続させたとしても万全とはいえないわけですが、緊急時に利用できる供給体制を少しでも盤石に近づけておく必要はあると考えます。
そこで、以前から伝えていたのが池そのものは埋め立てずに遺しておくべきという提案です。
減少する人口に見合わない規模の浄水施設ではなく、緊急時の小規模のろ過装置や、可搬式のろ過装置を今後、導入することで、災害時の断水危険性は少なくなります。
こういった技術の進展は日進月歩ですが、先進自治体は導入している例もあるほどです。
池の除却については、近畿財務局と調整とのことですが、私以外にも同様の要望をされていた議員さんもいらっしゃったので、議会開閉にかかわらず動向を注視してまいります。
さて、今回の議案は、「解散」から「存続」に、そして、「存続」から「解散」にと、ここ数年で考え方が定まらないほど、難しい議案でした。
解散に賛同したとはいえ、まだまだ課題を解決しなければならない事項があります。
上記の説明だけでは不安を払拭し切れないとも推量します。
折に触れて、申し上げてきましたが、今回の議題のみならず、これからの人口減少時代は、こういう難しい選択に迫られる局面から避けては通れないと痛感しています。
下水道料金も現状では難しくなりますし、子供が減り続ければ小中学校の統廃合も考えねばなりません。
もちろん、人口を増やす対策も必要ですが、数年でV字回復するなんていうことは、到底考えられません。
とはいえ、当たり前に享受できていたインフラが形を変える(再編)わけですから、どうしても不安に思ってしまいます。
わたしは、その不安を少しでも軽くして、マイナスの影響を最小化させることが果たすべき仕事だと考えています。